刑事コロンボ・第10話『黒のエチュード(Etude in Black)』のあらすじとトリック解説です。第2シーズン第1話(S2E1)は指揮者のアレックス・ベネディクト(ジョン・カサヴェテス)が犯人です。残された映像が決め手となるエピソードです。
あらすじ
愛人に結婚を迫られた指揮者のアレックス・ベネディクトは、結婚しない場合は不倫を公にすると言われたため、愛人の殺害を企てます。
アレックスは自身が指揮するコンサートの当日、会場を抜け出し愛人を鈍器で殴って昏倒させ、ガスを使って殺害。ガス自殺に偽装します。この時、犯行時に落とした花飾りに気付かぬままアレックスは現場を立ち去ります。
コロンボは被害者が大切にしていたインコもガスで死んでいたことなどから、自殺ではなく他殺として事件を捜査します。
そして、現場に落ちていた花の飾りから、アレックスが現場にいたことが証明されます。言い逃れできなくなったアレックスは罪を認めます。

©Universal City Studios
登場人物とキャスト
- アレックス・ベネディクト
犯人。指揮者。楽団の理事長の娘であるジャニス・ベネディクトと結婚し、楽団の常任指揮者となる。愛妻家のように振舞っているが、若い女性と不倫をしている。 - ジェニファー・ウェルズ
被害者。犯人の愛人。アレックスが指揮者を務める楽団の美人ピアニスト。アレックスに結婚を迫るが、殺されてしまう。
| 名前 | キャスト |
|---|---|
| アレックス・ベネディクト Alex Benedict |
ジョン・カサヴェテス John Cassavetes |
| ジェニファー・ウェルズ Jenifer Welles |
アンジャネット・カマー Anjanette Comer |
| ジャニス・ベネディクト Janice Benedict |
ブライス・ダナー Blythe Danner |
犯人
アレックス・ベネディクト
花飾り落としただけなのに、それが決定的な証拠となってしまう。重要なポイントになったは妻の証言で、もしも妻が偽証していれば、コンサートの前に犯行現場に行ったということは証明されなかったかもしれない。もちろん、不倫した夫をかばうほど妻もお人好しではなかったわけである。犯人がコンサートの前に花飾りを身に着けたのは、(そういうシーンがあるので)間違いないわけであるが、仮にコンサートの前なのか後なのかわからない状況だとして、さらに、真相がコンサートの後だったとしても、奥さんはコンサートの前だったと証言するに違いない。夫が犯人でなかったとしても、不倫という事実が確かであれば、奥さんは嘘をつくはずである。狡猾な人物像とはそぐわないかもしれないが、ちょっとした嘘で夫は刑務所送りならば、これこそ完全犯罪のような気もする。妄想しすぎという感じだが、それくらいに妻の証言は重要な証拠だったと思える。
トリック解説
犯人のアレックスはコンサートの開演前に会場から抜け出し、愛人を殺します。コンサート会場にいた犯人には車がないため、愛人の死んだ現場へは向かうことができないというアリバイが成立します。犯人は故障したと偽って、愛車を修理工場に預けます。この修理工場はコンサート会場の近くにあるため、修理工場に忍び込めば、車を使うことができます。なお、修理工場に忍び込むため、あらかじめトイレの窓を開けています。
犯人は愛人の死をガス自殺に偽装します。タイプライターを使って愛人の遺書を捏造します。捏造した遺書は愛人のタイプライターに挟みます。
犯人のミス
コロンボが犯人の偽装を見破るきっかけや、犯人を追い詰める証拠などをまとめます。
- インコの死
愛人は、ペットのインコをとても大切にしていました。そのため、ガス自殺で道連れするというのは、考えにくい状況でした。 - 被害者の頭の傷
アレックスは、愛人を殴って昏倒させたため、頭部に傷が残りました。 - タイプライターの遺書
遺書はタイプライターで書かれていました。普通、遺書は手書きで書かれることが多いと、コロンボは話します。 - タイプライターの文字のずれ
遺書が挟まれていたタイプライターで打った文字は、遺書に書かれた文字と、微妙なずれが生じます。このことからコロンボは、遺書は一度抜き取られ、その後、差し込まれたと推理します。 - 修理工場の車
アレックスが修理に出した車は、特に壊れていなかったことが判明します。さらに、修理工場に入った後、車が動いた痕跡(移動距離のメーター)が見つかります。
アレックスは、コンサートで指揮をするとき、妻の花飾りを襟元につけます。
この花飾りを愛人を殺した現場に落とします。事件の後、花飾りに気づき回収しますが、その姿をコロンボに目撃されます。
経緯を時系列でまとめると、次のようになります。
- アレックスが花飾りをつける
- アレックスが犯行現場へ向かう
- 愛人殺害。現場で花飾りを落とす
- コンサートで指揮。花飾りをつけていない姿が録画される
- コンサート終了
- 現場に駆けつける。花飾りを拾い、襟元に付け直す。この姿をコロンボが目撃
- 現場から立ち去る。テレビカメラに花飾りをつけている姿を撮られる
4と7に録画テープという物的な証拠が残っています。犯人は6のコンサート終了時に花飾りをつけたと言い訳しますが、コンサートよりも前に花飾りを付けたと妻が証言します。
つまり、花飾りを落とせるタイミングは、コンサートの前だけになります。
以上の証拠だけでは花飾りをどこで落としたのかわかりません。しかし、コロンボが現場で花飾りを拾う犯人の姿(現場に落ちている花飾り)を目撃したことにより、花飾りを落としたのが現場であることが明らかになります。7のテレビカメラの映像は、コロンボの目撃証言の裏付けになります。
- 妻の証言
アレックスの妻は、花飾りをつけたのがコンサートの後ではなかったと証言します。事実、花飾りをつけたのはコンサートの前、つまり、犯行の前です。 - コンサート録画
アレックスが指揮したコンサートの様子は録画されていました。これにより、アレックスの襟元に花飾りはないことが判明します。
妻の証言と組み合わせると、コンサートの前にどこかで落としたことになります。 - コロンボの目撃
現場で花飾りを拾うアレックスをコロンボが目撃しています。コンサートの前に花飾りをつけて、コンサート前にそれを落としたわけですが、その場所は愛人の自宅、つまり現場だったということになります。事件発覚後、現場に駆けつけた時に落としたのであれば、コンサートの時も花飾りを身に着けていないと不自然です。 - 死体発見後の映像
死体発見後、現場を訪れたアレックスはテレビのレポーターにつかまり、コメントを求められます。この時、アレックスの胸元には花飾りが映っていました。これはコロンボの目撃情報の裏付けになります。以上により、事件発覚よりも前に現場に花飾りを落とし、その花飾りを現場で拾って胸元に付け直したことが証明されます。
感想
ぺっぴんのピアニストが死亡し、自殺のようですが、なんか、すっきりしません。インコの死(大事にしていたペットも道連れ)、変な遺書、被害者の頭の傷、あの指揮者が拾った花などなど、違和感が多いです。うっかり花飾りを落としたのが最大のミスであると言えそうです。
コロンボの愛犬のデビュー作です。犬種はバセット・ハウンドですが、この頃、まだ名前はないといえます。英語のタイトルは「Etude in Black」で日本語タイトルと同じ意味になっています。指揮者が犯人、恋人探しなど、古畑任三郎「絶対音感殺人事件」と似ている部分が多いです。
ミステリーとしては、花飾りを落としたタイミングが犯行時しかない、という理詰め(証拠固め)が面白いと思います。自殺や事故死に偽装するときは部屋を密室にする、というのをミステリーでよく見かけますが、コロンボは密室という偽装工作が登場しない気がします。
口コミ分析
海外サイトの口コミには、conductor、goodなどが書き込まれています。
国内の口コミサイトには、愛人殺す、75分版などが書き込まれています。2021年11月20日の放送は96分版です。
余談
本エピソードは、もともと75分のバージョンでしたが、後にCM枠を増やすためにシーンを追加した96分版が制作されました。また 、コロンボの相棒となるバセットハウンドの「ドッグ」が初めて登場した回でもあります。出演者のブライス・ダナーは撮影時にグウィネス・パルトロウを妊娠しており、一部のシーンでそれが伺えると話題になりました。さらに、犯人役のジョン・カサヴェテスとピーター・フォークは私生活でも親友であり、その関係性が演技の掛け合いに影響を与えていると言われています。
この記事のまとめ
刑事コロンボ「黒のエチュード」のあらすじやトリックをご紹介しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 計画性 | あり |
| 偽装工作 | ガス自殺を偽装 |
| トリック | ― |
| ミス | 花の飾り |
| 動機 | 愛人の脅迫 |
| 凶器 | (拳銃) |
| コロンボの罠 | ― |

