『器物誘拐』は2004年3月3日に放送された『相棒season2』第19話です。弁護士夫妻の愛犬が誘拐されるという事件が発生。法律上は「物」として扱われるペットを特命係の杉下右京と亀山薫が調査することになります。
あらすじ
ある休日、薫は右京に呼び出され、弁護士・桐本達彦と雅江夫妻が飼う愛犬ラブの誘拐事件を捜査することになる。雅江は悲嘆に暮れ、200万円の身代金を要求する手紙が舞い込んだと訴える。指定された身代金受け渡し場所に向かう雅江だったが、犯人からの接触はなし。右京たちは、夫である桐本達彦の事務所を訪ね、事情を聞き出す。捜査が進むうち、雅江の元カレである野崎建夫のアパートで、誘拐されたはずのラブと、刺殺された野崎が発見される。右京は現場に残された鳴りっぱなしのラジオや抜かれたコンセントに疑問を抱き、警察犬が雅江の匂いを嗅ぎ当てたことで、雅江と野崎の不倫関係が発覚。雅江に殺人の容疑がかかる。しかし、右京はラブが現場で最低限の世話を受けていた状況から、雅江とは異なる犯人像を推測する。そして、達彦のラブに対する態度や、監視カメラの映像から、意外な真犯人の存在が浮かび上がる。

登場人物とキャスト
- 桐本達彦(小木茂光)
弁護士。 - 桐本雅江(久野真紀子)
達彦の妻。ラブをこよなく愛する愛犬家。 - 野崎建夫(池田政典)
:雅江の元カレ。殺害される。 - ラブ
桐本夫妻が飼うヨークシャーテリア。事件解決の決定的な鍵を握る。 - 杉下右京(水谷豊)
警視庁特命係。冷静沈着な切れ者だが、犬を抱きしめるなど動物好きの一 面も見せる。 - 亀山薫(寺脇康文)
警視庁特命係。情に厚く、ラブを自宅で預かるなど犬を深く可愛がる。 - 奥寺美和子(鈴木砂羽)
亀山の妻。ラブの世話もする。 - 宮部たまき(高樹沙耶)
小料理屋「花の里」の女将。右京の元妻。 - 伊丹憲一(川原和久)
捜査一課刑事。亀山との言い争いは健在。 - 三浦信輔(大谷亮介)
捜査一課刑事。初期は感情的な面が目立つ。 - 角田六郎(山西惇)
組織犯罪対策部第五課長。「暇か?」がお決まりの台詞。 - 米沢守(六角精児)
鑑識課員。特命係に協力する。
ネタバレ
ラブ誘拐事件の真犯人は、弁護士の桐本達彦でした。妻の雅江は元カレ・野崎と不倫しており、これが動機のひとつです。達彦は離婚によって愛犬ラブの所有権を失うことへの絶望感も抱いていました。達彦にとって、雅江を奪われること以上に、ラブを奪われることの方が重大な問題だったわけです。達彦は野崎を殺害し、雅江に罪を着せようと画策していました。実際にラブを誘拐し、身代金要求で雅江を追い詰めています。達彦は野崎の部屋にラブを置き去りにしたとき、ラブへの愛情から、電気をつけ、ラジオを流し、水を置いて掃除までしていました。しかし、この愛情が大きなミスとなります。ラブは達彦の落とした弁護士バッジを飲み込んでいました。手術でバッジは摘出され、さらに、防犯カメラの映像によって事件当時、達彦がバッジを身に着けていなかったことも判明します。事務所でのラブへの隠しきれない笑顔や、病院へ駆けつける姿など、達彦がラブを深く愛していた証拠が次々と露呈し、観念した達彦は自白に至ります。
感想と考察
たかが犬という扱われ方ではありましたが…ヨークシャーテリアのラブは、その可愛さゆえに、殺人犯である達彦も愛情を隠しきれず、結果的に決定的な証拠を残させてしまいました。そして、亀山や美和子、そして右京までもがラブにメロメロになるラブが、むしろ恐ろしいです。『動機もラブ、解決の鍵もラブ』という、まさに物語の中心にいた存在といえます。物語は、癒しとなるペットへの愛情が狂気へと繋がる様を、緻密なストーリー展開で描いていました。右京の「人間よりペットの方がいい」や、亀山の「ペットの為に人を殺す」、そして右京の「妙な時代になったものです」というセリフは、ストーリーを象徴していました。「裏切るかもしれない人間よりも犬猫の方が信用信頼できて癒やされるのは間違いない」という本音も印象的です。
達彦はクールで仕事熱心、倫理観も持ち合わせる弁護士というキャラでしたが、人間的な不器用さも目立ちます。愛情を伝えることが苦手や、職業柄人の醜い面を多く見てきたことによる疲弊が性格に現れているのかもしれません。ラブへの深い愛情を普段は隠しているのに、その愛情が隠しきれない瞬間には、人間味が感じられます。
余談
- 右京の腕時計
今回のエピソードでは、右京の腕時計がアップで映る貴重なシーンがあり、ハミルトンであることがわかります。 - 米沢さんの小ネタ
捜査一課の目の前で特命係に情報を伝え、「余計なこと喋ってんじゃねーよ!」と怒られる米沢さんが笑えます。 - たまきさんの愚痴
花の里でたまきさんが、結婚していた頃の右京が自分の手料理をあまり食べなかった(多忙のため家に帰れなかった)と愚痴るシーンがあります。二人の過去に思いを馳せたいところです。 - 初期捜査一課の姿
この頃の捜査一課は、三浦刑事の元気で感情的な言動、伊丹と亀山のいつもの喧嘩など、初期ならではのシーンが登場しています。しかし、のちにレギュラーとなった芹沢の出番はほとんどありません。 - 亀山の人柄
行く宛てのないラブをマンションの規約を破って自宅に連れて帰り、美和子に怒られながらも世話をする亀山の優しさ。子供だけでなく、動物まで預かるお人好しぶりが健在です。 - 右京の一人称
普段「僕」を使う右京が、珍しく「私」を使うシーンがあるらしいです。 - 小木茂光さん
犯人役の小木茂光さんは、後のシーズン17「新世界より」で別役で出演しています。 - ロケ地
犯人から指定された東が丘公園は蚕糸の森公園、右京と達彦が話した場所は日比谷公園などが使用されました。

