刑事コロンボ・第1シーズン第4話(S1E4)『二枚のドガの絵(Suitable for Framing)』は、美術評論家のデイル・キングストン(ロス・マーティン)が犯人です。1971年11月17日にアメリカで放送され、現在も、そのプロットや衝撃的な結末で、多くのファンから傑作として評価され続けています。本記事では、あらすじから結末、感想、考察などを解説します。
あらすじ(ネタバレ注意)
美術評論家のデイル・キングストンは美術品コレクターで有名な叔父のルディ・マシューズが遺言を書き換えたことを知り、叔父の殺害を計画。デイルは共犯者や電気毛布を使ってアリバイを作り、共犯者に絵も盗ませて、一旦は強盗の仕業にみせます。デイルのほんとうの狙いは、叔父殺しの罪を美術品の相続人である叔父の元妻にきせることでした。元妻が殺人で捕まると相続権を失い、甥であるデイルが相続人になります。
デイルは共犯者も殺し、叔父殺害時に盗んだドガの絵の回収にも成功します。しかし、デイルが持ち帰ったドガの絵にコロンボが近づいたことで決定的な証拠が残り、デイルが殺人現場から持ち出された絵を持っていたという事実が明らかになります。

登場人物とキャスト
| 名前 | キャスト |
|---|---|
| デイル・キングストン Dale Kingston |
ロス・マーティン Ross Martin |
| ルディ・マシューズ Rudy Matthews |
ロバート・シェイン Robert Shayne |
| トレーシー・オコーナー Tracy O’Connor |
ロザンナ・ホフマン Rosanna Huffman |
デイル・キングストン
犯人。美術評論家。大学での講義はもちろん、テレビ番組にも解説者として出演している。叔父のルディ・マシューズから、遺産として絵画を相続するはずだったが、遺言を書き換えられてしまい、犯行に至る。
ルディ・マシューズ
被害者。ピアノ演奏中に殺害される。早々に殺されてしまうため、全くと言っていいほど出演シーンはない。当初は甥のデイルに絵画のコレクションを譲るつもりだったが、寄贈するため、前妻のエドナに託すことにする。
トレーシー・オコーナー
共犯者、のちに被害者となる。美術学校の学生。デイルと付き合っている。デイルの指示に従い、殺人現場でアリバイ工作の一部を実行する。後に口封じのためデイルに殺害される。実は『刑事コロンボ』の原作者リチャード・レヴィンソンの妻。
その他
- コロンボ警部(ピーター・フォーク)
ロサンゼルス市警の警部補。今回の事件では、美術に関する知識は乏しいふりをしつつ、犯人のデイルを翻弄する。 - フランク・シンプソン(ドン・アメチー)
ルディ・マシューズの顧問弁護士。ルディの遺言変更に関わる人物であり、デイルの企みに巻き込まれる。オスカー受賞俳優。 - ルディ・マシューズ(ロバート・シェイン)
絵画コレクションの所有者であり、デイルの叔父。グランドピアノを弾いている最中にデイルに射殺される。彼の遺言の内容が事件の大きな動機となる。 - サム・フランクリン(ヴィック・テイバック)
デイルがアリバイ工作のために訪れた画廊で個展を開いていた画家。デイルからは才能がないと酷評される。 - マチルダ・フランクリン(ジョアン・ショーリー)
画廊の女主人でサムの妻。 - クリス(キャサリン・ダーク)
サム・フランクリンのアトリエでヌードモデルを務めていた女性。 - ワイラー課長(バーニー・フィリップス)
この事件の責任者であり、コロンボ警部の上司。
トリック解説
犯人は被害者を殺したあと、電気毛布で死体を温めます。さらに、共犯者も使って犯行時刻をずらし、完璧なアリバイを作ります。事件発覚後には共犯者を始末し、殺人の罪を被害者の元妻に着せようとします。
アリバイ工作
デイルは自身のアリバイを作るため、電気毛布や共犯者などを使います。
まず、共犯者を使って犯行時刻を遅らせます。犯行推定時刻に、どこか別の場所にいれば、完璧なアリバイが成立します。デイルは恋人のトレーシーに、現場へと向かわせ発砲させています。銃声が響いたので、この時、殺人が起きたようにみえます。デイル自身は、他の場所で人目につく行動をとります。
のちにデイルは共犯者を始末しています。こうすることで、アリバイ工作が発覚する可能性は低くなります。
そして、死体を電気毛布で温めることで、犯行時刻が遅れても、辻褄が合うように細工します。なお、実行犯はデイルですので、トレーシーが発砲した時、叔父は既に死んでいます。
罪のなすりつけ
デイルは叔父の元妻であり遺産の相続人であるエドナに殺人の罪をきせようとします。エドナの動機は叔父の遺産ということになります。
警報装置
デイルは共犯者が邸宅に侵入し発砲した際、警報装置が鳴らないようにします。これにより、警報装置の存在を知っていた人物に疑いが向くことになり、身内の犯行であることが強調されます。
ハイヒールの音
共犯者に女性を選ぶことで、犯人が女性であるようにみせます。
ドガの絵
デイルは殺人時に盗まれたドガの絵をエドナに送りつけます。こうすることで、エドナが犯人であるような証拠を偽装します。
警報装置、ハイヒールの音などは犯人のミスに見えますが、すべて仕組まれたことだと考えられます。
犯人のミス
コロンボがデイルの犯行を疑う根拠です。
不自然な行動
犯人のおかしな行動です。偽装工作のための行動にも関わらず、本来の目的が露呈してしまっています。
盗まれた絵
犯人のデイルは犯行時にドガの絵を盗んでいます。偽装工作の中では、強盗犯が盗んだということですが、貴重な絵だけをうまく盗んでいったことになったため、殺人を犯したにしては冷静な行動ととられます。
時間
犯人は時計が狂ったと言って二回も時間を確認しています。これはアリバイ工作のために必要な行動でしたが、短時間の間に二回も時計が狂ったことになっています。
個展の絵
デイルはアリバイ作りのため、ある画家の個展へ出向きます。アリバイ工作が目的だったので、絵に興味はなく、ほとんど見ていませんでした。そのため、個展に展示されていた絵をコロンボに見せられた際、「見る価値のない絵」といった内容の発言をします。
犯行の証拠
デイルの犯行を証明する証拠です。
コロンボの指紋
デイルは、共犯者からドガの絵を受け取った後、コロンボに指紋をつけられます。ラストシーンでコロンボがデイルを問い詰めたとき、コロンボは手袋をしていました。そのため、指紋が付いたのはデイルがドガの絵を受け取った後しかありえません。このことから、デイルが盗まれた絵を持っていたことになり、デイル=絵を盗んだ人物であることは間違いありません。
感想
コロンボ作品の中で評価の高いエピソードのひとつです。2021年のNHK「あなたが選ぶ!思い出のコロンボ」人気投票で第2位に選出されるなど、視聴者からの評価は非常に高い作品といえます。ちなみにですが、古畑任三郎「汚れた王将」や「黒岩博士の恐怖」でも、刑事の思わぬ行動が事件解決につながっています。
海外口コミ
海外サイトの口コミには、great、bestなどが書き込まれています。
国内口コミ
ラストシーンが最高、記憶に残る最後、ロス・マーティンの演技が素晴らしいなどが書き込まれています。
余談
- 本作は『刑事コロンボ』シリーズの中で、殺人が発生するまでの時間が最も短い(約54秒)とされています。
- 犯人役のロス・マーティンは、かつて12歳のピーター・フォークに演技指導をした経験があると言われています。二人は本作の前に映画『グレートレース』でも共演しています。
- トレーシー・オコーナー役のロザンナ・ハフマンは、本作の脚本家の一人であるリチャード・レヴィンソンの妻です。
- デイル・キングストンの日本語吹き替えを担当した西沢利明さんは、他のエピソ ードでも犯人役を多く演じています。また、エドナ役の関弘子さんは、そのかわいらしい声の演技が視聴者に好評です。
- 原題の「Suitable for Framing」は「額装にふさわしい」という意味と、同時に「濡れ衣を着せる(frame up)」という二重の意味が込められています。しかし、日本語タイトル「二枚のドガの絵」は、ドガという具体的な画家の名前を出すことで、作品に品格とミステリアスな雰囲気を加えており、絶妙な翻訳として高く評価されています。
- 冒頭でルディ・マシューズが演奏しているのはショパンの「別れの曲」 であり、その後の展開部分が犯行シーンのBGMとしてもアレンジされ、物語に不穏なムードを添えています。
この記事のまとめ
刑事コロンボ「二枚のドガの絵(Suitable for Framing)」について、あらすじやトリックをご紹介しました。事件について簡単にまとめると以下のようになります。なお、犯人は口封じのため共犯者も殺害しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 殺人の計画性 | あり |
| 偽装工作 | 相続人になすりつける |
| トリック | 死体を温める |
| ミス | コロンボの指紋 |
| 動機 | 遺産目当て |
| 凶器 | 拳銃 |
| コロンボの罠 | ― |
犯人
- デイル・キングストン
美術評論家で、貴重な絵画を手に入れるために犯行に至る。遺産相続が絡んでいるため、動機という点では、この人しかいないくらいに怪しい人物になっている。しかし、理由があったら殺すわけでもないので、決定的な証拠にはなっていない。
これまで(1~5話まで)の犯人は、ぼんやりとした犯人を用意しており、ギャング、物取り、謎の誘拐犯などなど、全く具体的ではなかった。この場合、犯罪が完結しそうにないので、いつまでもいつまでも捜査中になってしまう。それならば、もっと明確に罪をなすりつける人物を用意して、捜査を終わらせてしまった方がよさそうである。というわけで、このエピソードで初めて犯人は被害者の元妻という非常に具体的な人物を用意している。
罪を着せられる人物が明確になったことで、ややこしいことに、真犯人が犯した純粋なミスなのか、それとも真犯人が犯人のミスを装って意図的に残した偽の証拠なのかがわかりにくくなっている。そこが面白かったりするわけだが、例えば、ヒールの音や警報装置は、明らかになすりつけのためにあえて残された証拠だった。もしも倒叙形式ではなかったら、本物と偽物の区別がつかなくて、ひどく混乱していたに違いない。また、倒叙であるけども、犯人の意図が完全には明かされないという仕掛けもあって、やはり面白い。

