刑事コロンボS2E4・第13話「ロンドンの傘(Dagger of the Mind)」は、ロサンゼルス市警のコロンボ警部が初の海外視察でイギリス・ロンドンを訪れるという異色のエピソードです。シェイクスピア劇「マクベス」をモチーフに、落ち目の舞台俳優夫婦が繰り広げる犯罪と、それを追うコロンボの姿が描かれます。ロンドンの名所を巡るコロンボの姿や、ユーモラスな犯人夫婦のやり取り、 そして賛否両論を呼んだ傘と真珠が重要な証拠となる衝撃の解決策が、視聴者の間で大きな話題となりました。この記事では、あらすじ、登場人物とキャスト、犯人の偽装工作や結末、感想、考察、小ネタ(豆知識やトリビア)などをまとめています。
あらすじ
売れない舞台俳優の夫婦ニコラス・フレイムとリリアン・スタンホープは、大物プロデューサーのロジャーをだまして、名誉ある『マクベス』の公演にこぎつけます。しかし、ロジャーが公演前夜に計画に気付き激怒。公演を中止し、さらに、ふたりを演劇界からの追放しようとします。その結果、楽屋でロジャーと口論となったニコラスとリリアンは、もみ合っているうちに、リリアンが誤ってロジャーを殺してしまいます。
夫婦は、死体をロジャーの自宅へと運び、転落死に偽装しますが……、ロジャーが持っていた傘を楽屋番が間違えて持ち帰っていたことから、事態は思わぬ方向へ進みます。さらに、ロジャーの執事に犯行がバレたため、その執事も殺害。ロジャー殺しの罪を執事に着せようとします。
コロンボは、ロジャーの死体や死体発見現場に不審な点があることなどから、偽装工作を疑い、ニコラスとリリアンに殺人の疑いをかけます。
そして、被害者の傘の中にリリアンの真珠を忍ばせるという罠によって、犯人夫婦を自供させます。

©Universal City Studios
登場人物とキャスト
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コロンボ警部(
ピーター・フォーク
声:小池朝雄)
ロサンゼルス市警の警部。研修でロンドンを訪れ、偶然事件に関わることに。観光を楽しんだりもする -
【犯人】ニコラス・フレイム(
リチャード・ベースハート)
売れない舞台俳優。妻リリアンと共にロジャーを殺害し、タナーも殺害。精神的に弱い一面がある -
【犯人】リリアン・スターホープ(
オナー・ブラックマン)
ニコラスの妻で女優。夫と共に事件に関与し、夫を庇うために自白する -
【被害者】サー・ロジャー・ハビシャム(
ジョン・ウィリアムズ)
名制作者。ニコラスとリリアンに騙され、『マクベス』の公演資金を出すが、真相を知り殺害される。本の収集家でもある - 【被害者】タナー(ウィリフリッド・ハイド=ホワイト)
サー・ロジャーの執事。犯人に気づき脅迫するが殺害される - ダーク刑事部長(バーナード・フォックス)
ロンドン警視庁の刑事部長。ロジャーの遠縁にあたり、コロンボの案内役を務める - フェンウィック(アーサー・マレット)
楽屋番。ロジャーの傘を間違えて持ち帰ってしまう - オキーフ刑事(ジョン・フレイザー)
ロンドン警視庁の刑事 - ジョーンズ(ロナルド・ロング)
蝋人形館の館長 - ミス・ダドリー(シャロン・ヨハンセン)
劇団のスタッフ - ウォーカー・エドミストン
サー・ロジャーの車を洗車していた人物
トリック解説
殺人自体に計画性はありませんが、犯行後、被害者がこっそり犯行現場(楽屋)にきていたことを利用し、事後工作をしています。
事故死偽装
犯人らは、舞台の楽屋での犯行後、死体を衣装ケースに隠し、終演後に車で被害者自身の屋敷へと運んでいます。そして、階段で転んで死んだように偽装します。
- 机の本
ロジャーの机の上に本を開いたまま置き、そこに被害者がいたようにみせています - 盗まれた台本
犯人は「(ロジャーの)自宅からマクベスの台本が盗まれている」と嘘をつきます。事故死だけではなく、強盗も匂わせ、捜査をかく乱しています
執事の自殺偽装
犯人は、ロジャーの執事に犯行がバレたため、執事を自殺にみせかけて殺します。
手口は、まず執事にロジャーの本を持ち出すよう依頼します。そして、この本を使って、本を盗んでいた執事が自殺した、というストーリーを作ります。ここで、盗まれたマクベス台本をターナーの部屋に隠します。
犯人のミス
コロンボが偽装工作を見破るきっかけです。
ちぐはぐな証拠
転落死と断定するには、いくつか説明のつかない不自然な状況が残っていました。
- 本の蒐集家でもある被害者の机の上に置かれていた本は高価な物でしたが、その置き方がぞんざいでした
- 被害者の胸ポケットに入った老眼鏡は、階段から転げ落ちたにも関わらず、割れていませんでした
- 他にも高価なものがあるのにも関わらず、盗まれたものはマクベスの台本だけでした。これに対して、コロンボは、台本の盗難は偽装工作であると推理します
ロジャーが、舞台俳優夫婦の楽屋を訪れた際、傘を持っていました。この傘を舞台のスタッフが取り違えてしまい、ロジャーが楽屋を訪れていた証拠が残ります。なお、この傘はコロンボが見つける前に犯人が回収しています。
また、被害者のロジャーの車には雨の跡が残っていました。しかし、ロジャーの自宅周辺には雨が降っていませんでした。
決定的な証拠
ロジャー殺害時、リリアンが身に着けていた真珠のネックレスが切れます。このとき散乱した真珠のひとつをコロンボが発見。コロンボは、なにかもめ事があったのではないかと疑います。
この真珠を利用したコロンボの罠によって、犯人は自供に追い込まれます。
コロンボの罠
コロンボはロジャーの傘に真珠を一粒を忍ばせ、そして、犯人夫婦の目の前で、傘を開いてみせます。ロジャーが楽屋にいたという決定的な証拠を目の当たりにし、犯人は自供します。
コロンボは、傘に一切手を振れず、真珠を指で弾いて、うまく忍ばせます。犯人のひとりであるリリアンに、罠だと喚かれますが、「傘には触っていない」と冷静に事実を述べ、罠を成功させます。
感想
このエピソードは、「古畑任三郎vsSMAP」と共通する部分があると思います。
- ポジティブ感想
- 初めての複数犯人(夫婦)のエピソードなので新鮮
- マクベスを知っているとより楽しめそう
- 傘の取り違えに気づいた犯人が焦る様子が面白い
- 犯人を追い詰めるために仕掛けたコロンボの罠がみどころ。強く印象に残る
- ロンドンの街並み、観光を楽しむコロンボ、蝋人形館の不気味な雰囲気などがいい
- ネガティブ感想
- コールドクリームの瓶で人が死ぬことや、楽屋番が傘を間違える設定、毎日車を洗う設定などに違和感がある
- コロンボの証拠捏造はありなのか?フェアではない、反則だと思えてしまう
口コミ分析
海外サイトの口コミには、London、Americanなどが書き込まれています。
国内の口コミには、蝋人形、チリ警部などが書き込まれています。
考察
あくまで現在の日本の法律における解釈ですが、最初の犯行は明確な殺意がありませんので、傷害致死になりそうです。この件について傷害致死の罪に問われるのはリリアンだけですが、二番目の犯行(執事の殺害)は夫のニコラスも共犯になりそうです。どちらか一方がちょっと手伝っただけ、という犯行内容ではないので、どちらも同じ殺人罪の罰を受けるはずです。
マクベスの主演が目的だったので、欲を出さずに、公演だけをすばやくこなして、ささっと自白した方がよかったかもしれません。
コロンボの罠で使われた〈傘に入っていた真珠〉は完全なる捏造です。残念ながら違法な証拠になってしまいそうなので、裁判では証拠として認められそうにありません。危険すぎる証拠なので、そもそも裁判所に提出しそうにないです。「あなた方が真珠をみて勝手に自白した」という感じで誤魔化すのでしょうか。通用するかどうかはわかりませんが、なかったことになりそうです。結局のところ、自白が決定的な証拠になりそうです。
小ネタ
- このエピソードが刑事コロンボ初の海外ロケ作品です。ロンドンの観光名所が登場します。
- リリアンを演じたオナー・ブラックマンは、映画『007 ゴールドフィンガー』でボンドガールを演じています。
- 蝋人形館のシーンは『黒のエチュード』でジャズクラブとして使われた場所と同じセットです。
- ロジャーの傘は「レディ・アスターからもらったもの」と説明されますが、レディ・アスターことナンシー・アスターは、1919年にイギリス初の女性国会議員となった実在の有名人です。
- 本作は「マクベス」を深く下敷きにしており、夫婦の行動や内面の葛藤、そして破滅への道筋が「マクベス」のセリフや展開になぞらえられています。原題「Dagger of the Mind」もマクベスの有名なセリフからの引用です。
この記事のまとめ
刑事コロンボ「ロンドンの傘」について、ネタバレありであらすじやトリックをご紹介しました。原題は「Dagger of the Mind(心の短剣)」ですので、日本語タイトルとはだいぶ異なります。最後にドラマの内容を、殺人の計画性、偽装工作、犯人のミス、動機、凶器、トリック、コロンボの罠で簡単にまとめます。犯人夫婦はふたり殺します。表中の内容は、最初の殺人に関する内容です。二人目の殺人は、最初の犯行に気付かれ強請られたため、口封じで殺害します。なお、最初の殺人では、事故死だけではなく、強盗の可能性も匂わせるような偽装も行っています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 殺人の計画性 | なし |
| 偽装工作 | 事故死を偽装 |
| ミス | 被害者の傘 |
| 動機 | (突発的な殺人) |
| 凶器 | 鈍器 |
| トリック | ― |
| コロンボの罠 | 真珠のネックレス |

