忘れられたスター・あらすじ・ネタバレ解説【刑事コロンボ32】

刑事コロンボ第32話・S5E1「忘れられたスター(Forgotten Lady)」は犯人の意外な事実が隠されたエピソードです。その斬新なストーリーテリングと感動的な結末により、シリーズの中でも特に異彩を放ち、多くのファンから「傑作」「最高傑作の一つ」と評価されています。この記事では、あらすじ、登場人物とキャスト、犯人の偽装工作や結末、感想、考察、小ネタ(豆知識やトリビア)などをまとめています。

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あらすじ(ネタバレ注意)

かつてのスター女優グレース・ウィラーは、ミュージカル復帰をテレビで宣言しますが、元内科医の夫に反対され、公演のための資金援助も断られてしまいます。逼迫したグレースは資金を得るため、自宅で就寝前の夫に過剰な睡眠薬を飲ませ意識を奪った後、拳銃自殺にみせかけて殺します。
コロンボは、グレースの夫が自殺の前に本を読んでいたこと、睡眠薬を飲んだこと、拳銃を取りにいった様子がないこと、などの状況証拠から、自殺ではなく他殺を疑います。そして、映画の上映時間が延びたことを理由に、夫の死は、グレースによる他殺であると確信します。

グレースを追い詰めようとするコロンボでしたが、グレースは脳に腫瘍があり、その影響で、記憶障害に陥り、余命もわずかでした。夫殺害を忘れてしまっている様子のグレースを、コロンボは逮捕せず、身代わりとなって自首したかつての共演者を連行します。

©Universal City Studios

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登場人物とキャスト

  • コロンボ警部(ピーター・フォーク)
    ロサンゼルス市警察の警部。タキシード姿を披露する。
  • グレース・ウィラー(ジャネット・リー)
    往年のミュージカルスター。再び脚光を浴び、ブロードウェイでのカムバックを目指す。
  • ネッド・ダイヤモンド(ジョン・ペイン)
    グレースのスター時代の名コンビで、長年彼女を深く愛し支え続ける俳優・プロデューサー。グレースのカムバック公演のプロデュースを引き受ける。
  • ヘンリー・ウィリス(サム・ジャッフェ)
    グレースの夫で元内科医。グレースのカムバックに強硬に反対し、資金援助を拒否したため、彼女に殺害される。
  • レイモンド(モーリス・エヴァンス)
    ウィリス家の執事。グレースの映画鑑賞の習慣や、事件当夜のフィルム交換の証言が、コロンボの捜査の糸口となる。
  • アルマ(リンダ・ゲイ・スコット)
    ウィリス家のメイド兼料理人。レイモンドの妻。
  • アンダーソン検死官(ハーヴェイ・ゴールド)
    事件現場でコロンボと意見を交わす検死官。
  • ランズバーグ医師(ロス・エリオット)
    ヘンリーの同僚医師。ヘンリーの病状についてコロンボに情報を提供する。
  • レフコウィッツ巡査部長(フランシーヌ・ヨーク)
    コロンボの射撃テスト未受講を指摘し、追いかける女性警察官。
  • ハリス刑事(ジェローム・グアルディノ)
    現場に登場する刑事。
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トリック解説

犯人のグレースは、夫を自殺にみせかけて殺します。

自殺の偽装

夫に睡眠薬を飲ませ、意識を失っているうちに拳銃を握らせ引き金をひき、殺害します。夫が自殺した時、『グレースは映画をみていた』ということになっています。特に証言する人物はいないので、アリバイとは呼べません

  • 睡眠薬
    グレースの夫は、毎晩睡眠薬を服用していました。グレースは、夫が睡眠薬を飲む際に飲む飲み物に薬を溶かし、いつもの倍の睡眠薬を服用するようにします
  • 拳銃を握らせる
    夫に拳銃を握らせ、引き金に指もかけさせます。そのままの状態で引き金をひき、夫が拳銃を握って引き金を引いたようにみせます
  • 密室
    部屋の扉に鍵をかけ、バルコニーから外へ出ます。夫が死んだのは2階の寝室でしたが、バルコニー近くの木に飛び移れば、地上に降りることができます
  • 診断書
    死体のそばに夫の診断書を置き、診断書をみて自殺の衝動にかられた、という動機を捏造します
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犯人のミス

コロンボが自殺に疑いをもち、グレースの犯行に気付く手がかりです。

ちぐはぐな証拠

自殺する人間の行動とは思えない状況などです。

  • 睡眠薬の服用
    これから自殺する人間が睡眠薬を飲むというのは、不自然です
  • 読書
    被害者が読んでいた本は、ふざけた内容の小説でした。自殺する前に、読むような本ではありません
  • ドッグイア
    被害者はドッグイア(角の折り曲げ)をつけて本を読んでいました。本を買ったのは死ぬ3日前で、被害者はすぐに読み始めたようですが、事件当日は、ドッグイアをつけた形跡がありませんでした。犯人のグレースは、自殺を決意する前、つまり、診断書を読む前に、本を読み、睡眠薬を飲んだのではないかとコロンボに話します。しかし、本を読んで途中でやめたのであれば、事件当日のドッグイアがついているはずです。それがなかったので、グレースの話は、辻褄が合わないことになります
  • 履き物の泥
    拳銃はいつも車の中に閉まっていました。そのため、拳銃を取りにくいためには、一度外に出る必要があります。しかし、被害者の履き物の底には、外に出た痕跡が一切ありませんでした。履き物の泥について、グレースは、予め持ち込んだのではないかと話しますが…持ち込んでいたとすると、睡眠薬や読書の理由が説明できなくなります
  • 診断書の内容
    夫の診断書には、それほど深刻な内容が書かれていませんでした。病気を苦に自殺したと考えるには、動機が薄いということになります
  • 映画の上映時間
    グレースが犯行時にみていた映画の上映時間は1時間45分です。しかし、使用人の証言により、夜11時過ぎ始まった映画が終わったのは、深夜1時だったことが判明します。映画が15分延びた理由は、グレースが夫を殺している時にフィルムが切れ、映写機がずっと空回りしていたためです。コロンボは、グレースであれば、切れたフィルムを直すのに数分しかかからないことも証明します。つまり、グレースには、映画を見ずにどこかへ行っていた時間があることになります

犯行の証拠

バルコニーの密室トリックは、コロンボ自ら木に飛び移り、実証しています。さらに、被害者となった夫から睡眠薬(バルミタール)が、いつもの服薬量よりも多く検出されます。このことからコロンボは、被害者が完全に意識を失っていたと推理します。

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結末

グレースの夫は、グレースのミュージカル復帰に反対していました。これは資金が惜しかったからではなく、確かな理由がありました。実はグレースは、脳には腫瘍があり、余命2ヶ月と診断されていました。このことを知っていた夫は、ミュージカルの激しいダンスで腫瘍が破裂することを恐れ、復帰に反対していました。

腫瘍の影響により、最近の記憶がなくなってしまうグレースは、夫の殺害を忘れていました。

かつての共演者であり、グレースの恋人のような存在になったネッドは、コロンボによる殺人の立証やグレースの脳の腫瘍という事実を受け止め、グレースの身代わりとなって、連行されます。そして、ネッドは、グレースの寿命が尽きるまで、自分が犯人であると主張し続けると話します。

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感想と考察

このエピソードは、刑事コロンボシリーズの中でも特に「異色作」「傑作」「泣ける作品」として高く評価されています。従来の「成功者の転落劇」や犯人への追及とは異なり、犯人の悲しい運命と、それを取り巻く人々の優しさや愛情が深く描かれている点が多くの視聴者の心を打ちました。犯人を逮捕することだけが目的ではない、人間ドラマとしての深みが、シリーズ随一の感動を残す作品として支持されています。犯人が記憶喪失により犯行を覚えていないという設定は、コロンボの「犯人を追い詰める」という本来のスタイルを無力化させ、物語の焦点を「推理」から「人間ドラマ」へとシフトさせています。グレースの衰えゆく姿、夫の深い愛情、ネッドの献身、そしてコロンボの共感といった要素が複雑に絡み合い、観る者に深い余韻と問いかけを残します。「スターとは何か」「愛とは何か」「記憶とは何か」といった普遍的なテーマが、切ない結末の中で静かに問いかけられます。コロンボの人間味あふれる描写も、この作品を特別なものにしています。
ペンと手帳を忘れ、近くの人に借りたまま、返し忘れるというお決まりのコロンボが登場します。「別れのワイン」のときはペンだけでしたが、今回は手帳も持ち帰ろうとしました。なお、自殺時の読書は、古畑任三郎「ゲームの達人」に登場します。

タイトルの「忘れられたスター(Forgotten Lady)」は、犯人が殺人を忘れてしまうという結末を暗に示唆しているように思います。

犯人は夫の殺害を忘れたようですが、夫が死んだことは憶えています。夫が死んだことは知っているのに、なぜ、殺したことだけは忘れてしまっているのでしょうか。

医学的にあり得るのかどうかではなく、女優のグレースが芝居をしている(嘘をついている)可能性もあるという指摘です。感動的なお話の裏に隠された真実があるかもしれません。
犯人が、記憶を失くす芝居をしているのであれば、自身の病状に気付いている必要があります。犯人は『忘れっぽくなったと思う』という発言をしているため、正確には病名や病状を把握していなくても、兆候には気付いていたと考えられます。

口コミ分析

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余談

  • 2021年のNHK人気投票では第3位、2011年のAXNミステリー人気ランキングでは第2位に選出されるなど、常に高い支持を得ています。
  • 劇中でグレースが何度も鑑賞する映画「ウォーキング・マイ・ベイビー(Walking My Baby Back Home)」は架空の作品ではなく、1953年にジャネット・リーが実際に主演したミュージカル映画です。劇中では彼女が演じた役名を「ロージー」としていますが、実際の役名は「クリス・ホール」でした。
  • ヘンリーが読んでいた本「マクトウィグ夫人の変身」は架空のタイトルですが、その内容から、ポール・ギャリコの「ミセス・ハリス、パリへ行く」が元ネタであるとされています。
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この記事のまとめ

刑事コロンボ「忘れられたスター」について、あらすじやトリックをご紹介しました。最後にドラマの内容を、殺人の計画性、偽装工作、犯人のミス、動機、凶器、トリック、コロンボの罠で簡単にまとめます。犯人は、自殺にみせるため、部屋を密室にします。密室トリックは、バルコニーから近くの木に飛び移り、木をつたって地面に降りるというものです。

項目 内容
殺人の計画性 あり
偽装工作 自殺を偽装
ミス 映画の上映時間
動機 公演資金
凶器 拳銃
トリック 木をつたって降りる
コロンボの罠
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